草屋根の家が竣工しました。平屋の小さな住宅ですが、ひときわ思い入れの強い住まいとなりました。
自分が数年来テーマとしているスローライフ、土間、手間をかける豊かさ、などを実践する施主との出会いがありました。
土間いっぱいの建具を開くと家中を風が吹き渡ります。吹き溜まりのないように、家具は足元を浮かせています。
御愛用の拭き漆の家具に合わせて住まいの素材と広さを決定しています。テーブル横の8角形の柱はこれから時間のある時に楽しみながら柿渋を塗ってもらう予定です。木製建具は気密性が低いのでアンコールストーブを外気導入型で取り付けました。
棚は錆び鉄板仕上げ、素材へのこだわりです。
破風板は将来取り換えができるように、桧破風板を栗の楔で留めています。信州の板葺屋根の納まりをヒントにディテールを考えました。
草屋根から突き出る3本の煙突は空を切るシルエットとなるので、大きさ、形には慎重になりました。デザインにもそれぞれ収穫、希望、商標などの意味を持たせています。旗の図案は施主のトレードマークを図案化したものです。
トイレと洗面を仕切る収納棚も足元を浮かせ、照明を仕込んでいます。
浴室はモザイクタイルに漆喰壁、乳白ポリカ建具として伝統的な素材を用いながらも白に統一しています。
五右衛門風呂はこの家で4件目ですが、とても好評です。お湯も落とし込めるようにしていますが、どのお宅でも毎日焚いていらっしゃいます。今の時代、薪は幾らでも手に入りますから、立て込んだ住宅街でなければお勧めです。体の芯から温まりますので湯冷めしません。夏なら翌朝アツアツの風呂にもう一度入れます。焚き付けも慣れれば5分とかかりません。しかも楽しいし、可燃ゴミが減ります!
屋外物入れは小さな建物だったので建築らしからぬ簡単な工作物として作ってみたいと思いました。そこで3センチ厚さの杉板だけで構成する方法を考えました。樽構造はタガで外周の板を締め付けますが、内側で外周の板を固定する桶構造を考えました。はね出したパーゴラはsus16φで下向きの張力を加えて安定させていますが、テンションロットにはデラウエアの苗を添えています。将来ここに葡萄の房が茂り、木陰で読書などができたらどんなに素敵なことか、・・・
風呂蓋を施主さんに作ってもらいました。自分の家を一部でも自分で作ることはとても大切なことです。自分の家は自分でメンテナンス出来るのがベストです!桧製なので、湯気で膨らめば豊潤な香りが浴室に充ち溢れるはずです。