蔵を子供室にリフォームしたいとの要望を受けて現況調査に。目立った損傷もなく健全な佇まいでありました。
垂木に残されていたのは年号と大工、木挽きの名前。責任のある仕事は深い思い入れとして名前が残されたのかもしれません。
床下腐朽部を調査するのに何枚か床板を剥ぎ取るつもりが、床板全般が傷んでいたこともあり全て撤去する事に。
土台天端と根太天端を揃えて調整しろなく床が張られていました。柱寸法をぎりぎりの長さで山から切り出す木挽きと、正確な仕事をこなす大工とのコラボといったところでしょうか?
来待基礎石三段積、松正角の土台、杉柱、根太は半割の栗丸太、床板は一、二階共松八分板。梁、垂木は松。
2階の真ん中に掛かる曲がり梁が何とも愛らしい風情で、丁度潜れる高さとなっていました。子供部屋にはぴったりのスケール感!
時代を経た空間をうまくリフォームすれば感性の孵卵器となるはず!
東に少し傾いたことと、一階の床板が蒸れ腐れし始めていること以外に大きな損傷はありませんでした。
これまでの修繕も、昭和40年頃の瓦の葺き替えと外壁にカラー鉄板を上張りされたくらいで、改めて伝統工法の耐用年数の長さを実感しました。
伝統工法の長所の一つに「メンテナンスのしやすさ」があります。基礎、屋根、外壁をしっかりとつくり、傷みやすい建具枠、床板などは交換可能な部品とすることで、更新やメンテナンスがしやすくなります。メンテナンスのしやすさはリフォームのしやすさでもあります。