少し遠回りして鰐淵寺へ行った時、茶畑と赤瓦の民家が点在する小さな集落を見つけた。それが唐川だった。
その唐川の知人から生家の改修計画を頼まれた。
グーグルマップで見ると唐川は北山山脈の中央にある。市内からのアクセスは一度日本海側へ出てからとなり、物理的距離以上に遠い。唐川集落の醸し出す懐かしさや素朴さはこの距離感から生まれた差異なのだと思った。
古民家を壊して新築を考えていた気持ちから覚めたクライアントは、生まれ育った明治期の古民家に再び移り住む決心を下された。
自然と共に暮らす人は辛抱強い。迎える老後にもヤワな快適性を求める素振りが無い。
受け継いだモノをそのままの姿で住み続ける覚悟の御様子。
縁側の一本レールのガラス戸は135年の歳月にガタついているが、明治の吹きガラスを残すために同じ仕様で作り直したいのだと。せめて2本レールにしたら使いやすいのではないかと提案するも、このままで良いと一笑された。
文化度の高い改修計画になりそうである。
ご主人の判断に黙ってうなづ頷く奥さんもステキである。